ボッティング大田朋子
普段はイギリスに住んでいる私ですが今年は11歳の娘と「サバティカル」をとることにして、1月から娘と二人でスペインに来ています。
中期滞在するスペインでは家具付きのアパートを借り、娘はスペインの現地のインターナショナルバカロレア(IB)の学校に通いはじめました。小学生の留学や親子留学といった在学中に一息ついて世界を広げる様々なオプションを最近はよく耳にします。私もイギリスで仲の良い友達家族が1年間ギャップイヤーを取って世界一周したり(子ども3人を連れて!)、昨年子ども二人を連れてフランスに行き、1学期間子どもを現地の学校に通わせたなどの体験話を聞いていたので、軸はイギリスの教育システムに置きながらもギャップイヤーというかサバティックの機会が作れればいいなあと漠然と思っていました。
娘はイギリスではパブリックスクールのイヤー7なのですが、ちょうど昨年受験を終えて2年後のイヤー9から通うシニアスクールが決まっているので、進学先が確定している今はサバティックに最も適している時期だと思いました。
サバティカルにスペインを選んだ理由は、アルゼンチンで出会った私達夫婦は(夫はイギリス人)二人ともスペイン語が堪能で子育て期が終わったら夫婦でスペインに一定期間また住みたいと思っていること、将来私達を訪ねてくる我が子たちにもスペイン語をある程度扱える用になっていてほしいなどの理由が重なったからです。イギリスに引っ越す前に家族でスペインに住んでいたことも影響しています。スペインへの中期移住計画を進めていくなかで、スペイン語圏なら中南米でもいいし、スペインでもまだ住んだことがない都市に行くのもいいなあなんて調べた時もありましたが、土地勘が多少なりともあることや現地に信頼できる友達が何人もいる土地の方が今の自分が求めている時間が過ごしやすいと思って昔住んでいた同じ都市に決めました。またスペインで生まれイギリスに引っ越す3歳過ぎまではスペイン語ばかりしゃべっていた娘に、成人前にスペイン語ネイティブの発音を取り戻すきっかけを作りたい思いもあってスペインに決めました。
外国語習得の臨界期を意識すれば子どもがもう少し早い年齢で留学できればよかったかもしれませんが、コロナがあってイギリスで中学受験があって、とメインストリームでの生活の軸との兼ね合いがあり実現するのが今の時期になったのでした。
・現地での学校選び
11歳の娘はイギリスではイヤー7(7年生),日本では小学校5年生の年、スペインでは小学6年生です。スペイン現地での学校はインターナショナルバカロレアの学校にしましたが、その理由は8年前までスペインに住んでいたときに息子が通っていた学校で馴染があったからです。遠隔から学校を見学せずに決めるとなると何かと事情がわかっている学校だと安心だったことや、その学校は18歳まで続く一貫校なので住んでいた当時のママ友がまだ同じ学校に子どもを通わせているのでママ友ネットワークがあったこと(制服や体操服などは昔のママ友がサイズアウトしたお下がりを準備してくれました)なども助かりました。その学校はインターナショナル生徒用のスペイン語の補修授業がオプションであるのでスペイン語を学びながらも学業が続けられる環境もよいなあと思いました。
学校では現地の子供達のスペイン語や地域の言語であるバレンシア語の授業のときに、娘は外国人生徒用のスペイン語クラスに参加しています。理科や算数、体育やアートといった授業は他の生徒といっしょにスペイン語で受講。インターナショナルバカロレアの学校なので英語で行われる授業もありアカデミックの高さに定評がある学校なので英語で理科や社会、算数の授業を受けて学業を止めずにいけるとこも良いと思ってたのですが、こちらは誤算でいくらIB校とはいえイギリスから来るとさすがに英語のレベルが違うし、教育制度の違いでスペインだと1学年下がるためか学習内容のレベルもあまりチャレンジングではないことが受講してからわかったので、その点は学校に相談して時間割をリアレンジしていただけました。学校生活の第3週目からは英語での授業に代えてスペイン語クラスを補強した時間割で進んでいます。
・子ども留学の適齢期
子ども留学の適齢期みたいなのでいうと、1ヶ月目が終わろうとしている今の感想では、現地で毎日学校に通っているおかげで子どもの学ぶボキャの数が多さに圧倒されています。子どもの学習スピードは早くて羨ましい限り。娘のスペイン語発音はまだネイティブに戻っていないですが「3歳までに話していた言語だからスピーキングも時間の問題だよ」との信仰を胸に今後滞在期間が長くなるにつれ進歩する娘のスペイン語にも期待しています。
子どもを外国語に触れさせる適齢期みたいなのでいうと、環境が許すならば低年齢で触れさせた方が何かと後が楽かなあというのが個人的な感想です。うちの場合は留学時に娘は今11歳で、9歳から12歳の脳のゴールデンエイジ間でありますが外国語習得の臨界期は過ぎていると感じます。一方でこの年齢の留学で良い点としてはスペイン語の勉強にしても自分から取り組む年齢なのでサポートする親の役割的には「楽」なことでしょうか。子ども本人が好きなことを持っている年齢でもあるので、やりたいことに語学を結びつけられる点はよいなあと思いました。娘の場合はフルートの先生を現地で見つけました。毎週親子で頭に汗をかきながらスペイン語でフルートレッスンを受講していますが、これは本当によい勉強になっています。
社会的な側面では11歳というと友達同士でグループができている年齢だからもあるかもしれませんが、学校ではインターナショナルの子ども同士が友達になりやすいというのが1ヶ月目の現在の印象と感想です。言葉でのコミュニケーションで友達を作る時期ですしね。そういう視点でいうと、言葉が多少通じなくても公園にいたら一緒に遊んでいたというように小さい年齢のほうが友達作りがしやすいし、言語の壁を意識せずに子ども同士で遊ぶので結果言葉も習得できるのがよいなあと思いました。
子どもの言語学習には子どもの年齢と期間が関係していると聞きますが、うちの場合もそれを実感していて、娘はイギリスに引っ越す3歳過ぎまではスペイン語ばかりで話していましたが、言葉を感覚で覚えていたのでスペインを離れたあとはすっかり忘れてしまったように見えました。一方でイギリスに引っ越した時すでにスペイン語での読み書きをしていた息子(8歳までスペイン語圏)はイギリスに引っ越してからも毎週スペイン語のレッスンを続けているおかげもあって今でもセミネイティブレベルにスペイン語をキープしています。親は
子どもの年齢に応じたサポートが必要だなあと感じています。
・生活のこと
住む場所はネットで検索して市内に家具付きのアパートを借りました。Airbnbなどの民泊サイトで探していたのですが、滞在期間を通して借りられる物件が見つからなかったのでロングステイ物件を扱っているエージェント経由で賃貸しました。オーナーの対応や物件がある地域の便利さ、家のこまごまとしたことなど「Review」を参考にできるAirbnbとは違ってエージェント経由だと個々の物件を使った人たちの具体的な評価が前もってわからないのが懸念点でしたが、よい物件に出会えてよかったです。実は一度鍵を家のなかにおいたままドアを閉じてしまったことがあって、青ざめながらエージェントに電話をしてすぐに近くのオフィスに合鍵を取りに行ったことがありました。緊急時にどこまで対応してくれるかが大事ですよね。
娘が通う学校は郊外にあるので通学はスクールバスをお願いして、朝はスクールバスで登校し、夕方は私がお迎えに行っています。スペインに住んでいたときは子どもたちは昼食時に一時帰宅して家で食べて午後にまた学校に戻る生活をしていたのでここでの給食経験がなかったですが、娘がいうに、美食の国だから期待してたけど意外にも学校の給食が美味しくないとのことでびっくり!
住み始めて1ヶ月目は住み始めた地域を歩き回って毎日の食材の買い出しに使える店を発掘したり、交通機関のカードを作ったり、娘の習い事をアレンジしたり、図書館に通ったりして生活ペースを整えることに費やしました。子連れで異国に住み始めるときって、週日のルーティーンの見通しが立つまでは不安ですよね。サバティック経験ママから、「2週間が終わると生活も子どもの学校も一段落したよ」と言われていたのですが、本当にその通りで1週間目が終わって生活が見え始め、ルーティーンができてきた2週間目が終わったあたりでほっと胸をなでおろしました。
・イギリスの学校の理解とサポート
ちなみに、サバティカルが終わったあとはイギリスの学校に戻ります。娘が通うイギリスの学校には去年の夏前から「翌年にサバティカルを取りたい」という話を校長にしていました。1学期前までにこういった通知をしていないと学費が請求されてしまうので、早めに!アメリカ出身の校長が自身が子どものときに休学して家族旅行をした経験があったこともあって期待以上の理解とサポートを示してくださりました。イギリスの学校からは休校中の学習要項のリストや練習ノート、試験の過去問などをいただいたり、今でも毎週授業の内容の通知をくださったり採点もしてくださったりと、学校のサポートに感謝でいっぱいです。見えるところでも見えないところでも多くの人に支えられてこのサバティカルができていることを改めて感じます。
娘のスペイン語の取得を目標にスペインに来ましたが、何よりも娘とこんな風に二人で生活できるなんてかけがえのない宝物のような時間。二人で知らないことを発見しながら異国の地で生活を作っていく日々を大切に過ごしたいです。
ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota
ライター&プロジェクトプロデューサー
アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。
現在イギリス・カンタベリー在住。
メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。
アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。
⇒プロフィールはこちら https://tomokoota.wordpress.com/about/